靴の底にはなぜ溝があるのか
私達の履く靴の底には一般的には溝があります。もしこの溝がないとどうなるかを、考えてみます。
まず、考えつくのは平らで凸凹がない面を溝の無い靴で歩いたら、滑りやすくて歩きにくいのではないか、ということです。
実は、あまりこれについては直ちに問題にはなりません。歩く床が濡れていなければ、靴底がゴムやゴムに似た素材であるエラストマーなどであるため、溝の有無関わらず滑りにくいです。
しかし、床が平らな面で濡れていると、俄然滑り安くなるのです。もし、水に濡れた平らな面の上に溝の無い平らな靴底で歩くと(現実には靴底がすり減って溝が無くなっている場合が有り得ます)、極めて滑りやすく危険です。雨の中外を歩いた後にビルに入ってタイルや大理石の床でいきなり滑ってヒヤッとしたことがある人も多いでしょう。
この滑りやすさは、靴底と歩いている面の間に水の層が出来るのが大きな理由です。専門家の間ではこのような状態を流体潤滑といいます。流体潤滑の状態になると、固体どうしが接触している状態に比べて、(境界潤滑と言います。この場合、靴と床が直接接触している状態です)数桁滑りやすさ(摩擦係数)が減ります。
水の層ができていると滑りやすい、ということは直観敵にも分かるでしょう。
ならば、靴底に溝があるとどうなるかというと、溝のある部分から自らが逃げ、水の層は出来ません。このため、溝の無い部分も水の膜は出来にくく床に接触しやすくなります。結果的にはある程度の摩擦が起き、滑りにくくなるのです。
靴底の溝の重要性はむしろ水の層が出来ることをさけることにあると言えるでしょう。
なお、氷の面でも滑りにくい靴はどうしたら、となると容易ではありません。これまで様々な商品が出ていますが、未だに滑りにくくする性能の向上は道半ばです。これについては別に記事を書きたいと思います。